卒業制作として「CADで電車(鶴舞線3000形)を作った」話
この記事を読むのに必要な時間は約 23 分です。
中の人の通う学校では卒業制作というものがありました。
中の人は名古屋の専門学校に通い、2年間を通して機械設計や自動車のことを主に学びました。(卒業済)
その授業の一環として、「CATIA V5」による、CADのモデリング実習がありました。
最終制作課題として、グループを組んで自由にテーマを決めて何かをモデリングする「卒業制作」が課され、私たち4人のメンバーは、電車を作ることにしました。
全くトラブルがなかったというわけではありませんが、割とスムーズに作業を進められ、電車は無事に完成しました。
後に卒業制作発表が行われ、我がチームもパワーポイントにて発表を終えました。
メンバー全員協力して、精一杯作った電車です。ちょうど名古屋市交通局も100周年とのことです。学内だけでなく、ネットの皆さんにも見てもらいたいと思い、ここに公開します。
発表後、『「YouTubeにそのまま公開できるクオリティのパワーポイントを作る」というコンセプトの元、頑張って作りました』と担任の先生に伝えたところ、「本当に公開してみては?」という趣旨の返事を頂けたので、学校から許可をいただけたものと判断し、思い切って公開致します。
なお、プライバシーの保護のため、WEB公開用スライドや画像ではメンバーの名前等は匿名化しております。加えて、メンバー全員のネット公開の了承を頂いています。
これがチームFの渾身の力作だッ!
動画(準備中)
実際に発表したスライドを一部編集して公開します。
動画は後でYouTubeにあげてここに貼ります。しばらくお待ちください。
以降で静止画にて解説していますのでそちらをご覧ください。
詳細(スライドを切り抜いて詳しく説明しますね)
オープニング
では、発表を始めます。
もちろん、「特別な許可で貸し切りにした」わけではないです
制作メンバー紹介
4人チームで制作しました。
作った電車の「鶴舞線3000形」について
作った電車について説明させてください。
まずはファーストインプレッションを……
鶴舞線の路線
鶴舞線をご存じない方もいらっしゃると思うのでざっと紹介。
鶴舞線は上小田井駅から赤池駅を繋ぐ、青いラインカラーを掲げる名古屋市営地下鉄の路線です。
名鉄犬山線と豊田線に直通し、名鉄車が乗り入れています。(交通局の車両が名鉄線も走りますし、名鉄の車両が鶴舞線も走ります。)
鶴舞線を走る車両の紹介
まずは交通局の持ち物の車両から。
それぞれ拡大します。
乗り入れている名鉄の車両も紹介します。
ここで皆さん疑問に思うのではないでしょうか↓
なぜ3000形を作ろうとしたん?
気になりますよね。
なぜ「鶴舞線3000形」を作ろうと思ったのか
では、お答えしましょう。ちゃんと理由があります。
先ほどの電車の年代を見ていきます。
車体の雰囲気でおわかりになった方もいらっしゃるかもしれません、画像のように3000形が最も古く、N3000形が最も新しくなっています。
3000形の登場は古く、鶴舞線の開業時から走っている車両です。(第1次期の落成から40年以上経っており、本記事執筆時点での交通局における最古参の車両です。)
ということは、なかなか消耗してきています。
そこで交通局は3000形を廃車し、新形式による置き換えを計画します。これは2011年から実行され、卒業制作発表時点では、なんと残り僅か3編成しか残っていません。
「形式が無くなってしまうならCAD上に遺そう!」という、メモリアル的意味を込めて3000形を選びました。
他の理由もあります。またまたこの4種類をご覧下さい。
『丸みがなくて直線的、まるで羊羹や名古屋銘菓「ういろう」を包丁でスパッと切ったかのようなフォルム。3000形、作りやすそうじゃね?』
3000形を見てそう思いませんか?
そんなたわいもない理由も後押ししました。
あと「中の人と、もう1人のメンバーが鶴舞線ユーザーであること」と、「中の人が個人的に3000形が好きだから」という理由も付け加えておきますね。
自己満足!
制作スケジュールや部品作成の人員の割り振りについて
電車の制作にあたり、制作計画の類いを毎月月末に提出する必要がありました。
どこをどのメンバーが担当するのか↓
誰がどのパーツを作ったのか↓
CAD上でモデリングするときに工夫したところ
・メンバーで分業するために、上半身と足まわりの2部に分けて制作。後で合体できるように寸法仕様を統一しました。
・CADの2モードを切り替えて、効率よくパーツのモデリングを行いました。
「パートデザイン」がソリッドモデルを作るモード。「ジェネレーティブシェイプデザイン」がサーフェスモデルを作るモードです。
3DCADのモデリング手法「ソリッドモデル」と「サーフェスモデル」は下のサイトの説明が詳しいです。
3Dモデルの表現方法-ソリッドとサーフェス (d-engineer.com)
・後で特定のパーツ単位で組み込めるように細かいパーツ単位でproductファイルを組みました。
例えば床下の台車をアッセンブリ、モジュール化して簡単に他の車両に持って行けるようにするなど、親ファイルと子ファイルの関係性を明確にしました。
ネジなど使い回すパーツも、規格をあわせ、都度作らなくても済むようにしていました。
・似た形で、そのスケッチを応用できそうなところは、「スケッチのコピー」をしてラクして手抜きしました。
例えばiPhone12とiPhone12Proを比べたら、外観はレンズの数くらいしか変わらないので本体の輪郭をどちらかからパクってきたり……ry
てな感じです。
たとえが下手です()
モデリングするときに苦労したところ
作りたい電車。それが3000形という名前であることや、外観も、手持ちの写真でわかっています。しかし、いざCADにむかってみると、「そのパーツが実際どのくらいの寸法なのか」が分からないと手も足も出ないことを実感しました。
適当に寸法与えちゃうと、特定のパーツが肥大化したヘンテコ電車になってしまったり、もはやプラレールになってしまうかもしれない。
あと、「どうせつくるなら、実寸にしよう。」。
資料集めが重要です。
そこで、
さらに特定のパーツのアップ画像目当ての写真を追加で撮りに行ったり、
SNSを用いて情報収集したり、
Google先生にたくさんお世話になったり……
しました。
これら解決策の詳細は後述しますね。
そのほか苦労した点
・各々が作ったパーツを組み合わせたら「何かおかしい」ということもしばしば……。穴の位置がちょっとずれてしまったり、口頭で伝達していることもあって小さなミスが発生。
・写真を撮ったり資料集めても、どうやっても寸法が分からないパーツがありました。そういうのは全て勘で、他の寸法が分かっているパーツと比較して「それ風なサイズ」に仕上げました。
・ファイル保存と名前付けにミスがあり、パーツの呼び出しに難がありました。中身がちょっと違うのに、ファイル名が一緒。(本来はマズイ) でも保存している場所が違うから気づかずってことも……。
順調にいったわけではないのです
解決策の部分を詳しく説明します。品質担当のメンバーBこと中の人でしたが、同時に(事実上の?)資料担当も務めさせてもらいました。ですからここは特に詳しく書かせてください。先にお詫びしておきます。長くてごめんなさい。
モデリングに使用した資料について
さらに特定のパーツのアップ画像目当ての写真を追加で撮りに行った
もともと、中の人が地下鉄好きなこともあって、3000形の画像はある程度撮ってありました。
下のスライドの左の写真は卒業制作の話が出る以前に撮ったものです。(2021年4月1日、上小田井にて撮影)
参考にして、右のCADを作ったっていう感じです。
しかし手持ちの写真には写ってない部分が多々あり、追加で撮りに行きました。
モデリングに関連する、中の人が撮影した画像の一部を貼っておきます。他形式でも参考になりそうなものも撮りました。
重いので興味ない人は飛ばしてください【推奨】
多すぎてすみませんでした
基本的に上の写真群の自分で撮った画像たちを参考にしてモデリングしておりますが、どうしてもわからない(撮りようがない)箇所もありました。
SNSを用いて情報収集した
中の人は電車が趣味のひとつなので、Twitterの電車垢を持っていました。
撮れないところは仕方ない…Twitterで調べてみよう…
例えば運転台の内部の写真。これは赤池駅の始発前の始業前検査時か、上小田井のホーム入線後の発車待機時くらいにしか撮れないでしょう。(中の人がそう思いこんでるだけかもしれませんが…)
また、3000形が廃車されるときに、解体現場へ行き車両が真っ二つに切断された画像を投稿されている方もいて、電車の構造理解の参考になるかもしれない。
本来なら自分たちの足で、そこへ赴き自分の手で撮る、取材するのが大原則です。場合によっては鶴舞線を整備している交通局日進工場の工場見学まで視野に入れるべきでしょう。
しかしながら、卒業までに時間が無くCAD制作の作業時間も有限であることから、いくつかTwitter上の投稿写真を参考にしました。
すべてを網羅しているわけではないのですが、URLをかいておきます。(上手く表示されないアカウントがありましたら、掲載後にその方のアカウントが削除されたり凍結されていることが原因です。ご了承ください。)
ありがとうございました。
Google先生にたくさんお世話になった
Google検索で見つかった資料にも、ものすごく助けられました。
1.名古屋市電子調達システム
業者さん向けのポータルサイトがあります。名古屋市電子調達システムです。
名古屋市営地下鉄は公営の交通機関なので、基本的に工事やシステム関係など何かしらのアクションは競争入札で行われます。
このポータルサイトを追うことで、何か得られないかと考えました。
前述の通り、鶴舞線3000形が廃車されています。調べてみると、解体工事の入札案件があり、この添付資料に車体寸法データがありました。やったね
3000形はアスベストを含む断熱材が使われており、位置と大きさを示すために扉寸法や窓寸法など細かく寸法が載っていました。
2.日立評論
3000形を作っている(機器を組み付け車体をつくり出す=艤装)会社が日本車輌と日立製作所の2社あります。このうち日立の刊行物「日立評論」に3000形の話が載っていました。
1977年11月号 http://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1977/11/1977_11_11.pdf 1978年7月号 http://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1978/07/1978_07_11.pdf 1979年5月号 https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1979/05/1979_05_04.pdf 1979年10月号 https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1979/10/1979_10_06.pdf
日立評論はモーターの外形や床下機器の機器箱レイアウトの参考になりました。
3.地下鉄市バスファンサイト「まるはち交通センター」
鉄道に限らず、オタッキーなディープな趣味世界には必ず界隈の集うサイトがあるものです。もちろん、例に漏れず、市営地下鉄・市バスのファンサイトがあります。
「まるはち交通センター」といいます。
まるはち交通センター(名古屋市交通局ファンサイト) (maruhachi-kotsu.com)
4.個人WEBサイトやテレビ番組等
http://www.ototetsu.jp/sound/nagoya/ntb3000.html https://ameblo.jp/tq8590/entry-12658539639.html https://www.youtube.com/watch?v=QWQM_-lJTwI https://tv-aichi.co.jp/senro/
モデリングをいかにリアルに近づけるか研究しました
CAD上に文字を入れるテクニックがあり、そこで使いました。
ギャラリー
CADは学校にしかないため、ここでお見せできなくて残念です。
感想
最後までご覧いただきありがとうございました
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